トイレが近いのはなぜ?頻尿・夜間頻尿の原因と東洋医学での考え方

① はじめに

「最近、トイレが近くなった気がする」
「出かける前にトイレの場所を確認してしまう」
「夜中に何度もトイレに起きて、ぐっすり眠れない」

このような悩みは、なかなか人には相談しにくいものです。

特に年齢を重ねると「歳だから仕方ない」と考えて、そのままにしている方も少なくありません。

しかし、頻尿には水分の摂り方や冷えなど日常生活が関係しているものから、過活動膀胱、前立腺肥大症、糖尿病、尿路の炎症など、医療機関で確認した方がよいものまでさまざまな原因があります。

今回は、トイレが近くなる原因や夜間頻尿について、西洋医学と東洋医学の両方から分かりやすく解説します。

② 何回トイレに行くと「頻尿」?

日本泌尿器科学会では、一般的に朝起きてから寝るまでに8回以上排尿する場合を頻尿としています。

ただし、排尿回数には個人差があります。

そのため「7回だから正常」「8回だから異常」という単純なものではなく、8回以下でも以前より明らかに回数が増えたり、本人が「トイレが近くて困る」と感じている場合は頻尿と考えられます。

また、眠ってから排尿のために1回以上起きる状態を「夜間頻尿」といいます。

1回程度ならそれほど気にならない方もいますが、2回、3回と繰り返すようになると睡眠が分断され、翌日の疲労感につながることもあります。

③ トイレが近くなる主な原因

頻尿の原因は一つではありません。

代表的なものには、

・過活動膀胱
・前立腺肥大症
・膀胱炎などの尿路感染や炎症
・排尿後に尿が残る「残尿」
・糖尿病などによって尿量そのものが増える「多尿」
・利尿作用のある薬
・水分の摂りすぎ
・心理的な緊張や不安

などがあります。

たとえば「一度に出る尿は少ないのに何度も行きたくなる」のと、「毎回しっかり尿が出るけれど回数が多い」のでは、考えられる原因も違います。

そのため、単純に「トイレが近い=膀胱が弱い」とは限りません。

④ 夜中だけトイレが近いのはなぜ?

日中はそれほど気にならないのに、夜になると何度もトイレに起きる方もいます。

夜間頻尿には大きく、

・夜につくられる尿の量が多い
・膀胱にためられる尿の量が少ない
・睡眠が浅く、目が覚めるたびにトイレへ行く

といった原因があります。

また、高血圧や心疾患、腎機能障害、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などが夜間頻尿に関係する場合もあります。

「夜中にトイレへ行くから眠れない」と思っていても、逆に眠りが浅いために目が覚め、そのついでにトイレへ行っているケースもあるのです。

⑤ 東洋医学では頻尿をどう考える?

東洋医学では、頻尿という一つの症状だけを見るのではなく、

「身体が冷えているのか」
「疲れやすいのか」
「尿の色や量はどうか」
「喉は渇くのか」
「夜に多いのか、昼に多いのか」

など、身体全体の状態から考えていきます。

頻尿で特に関係が深いと考えられているのが「腎(じん)」です。

東洋医学の「腎」には、西洋医学でいう腎臓だけではなく、成長や老化、生殖、水分代謝など幅広い働きが含まれています。

そのため、年齢とともに夜間の排尿回数が増えたり、尿を我慢しにくくなったりする状態では、腎の働きが低下した「腎虚(じんきょ)」という考え方をすることがあります。

ただし、頻尿=すべて腎虚というわけではありません。

⑥ 冷えてトイレが近くなる

腎陽虚・腎気不固

頻尿の方でよくみられる東洋医学的なタイプの一つです。

・手足や腰が冷える
・寒い日にトイレが近くなる
・夜中の排尿が増えた
・尿の色が薄い
・足腰がだるい
・年齢とともにトイレが近くなった

このような場合には、身体を温めたり尿を保持したりする腎の力が弱くなっていると考え、腎陽虚(じんようきょ)や腎気不固(じんきふこ)などを考えます。

特に「昔より冷えやすくなった」「夜に何度もトイレへ行く」という方では、このタイプを疑うことがあります。

⑦ 胃腸が弱く、身体が冷えている

脾陽虚

東洋医学では、水分代謝に関係するのは腎だけではありません。

胃腸の働きを含む「脾(ひ)」も、水分を身体の中で適切に巡らせる重要な役割を担うと考えます。

・胃腸が弱い
・疲れやすい
・身体が冷えやすい
・軟便や下痢になりやすい
・食後に眠くなる
・むくみやすい
・冷えるとトイレが近くなる

このような方では、脾の身体を温める力が低下した脾陽虚(ひようきょ)を考えることがあります。

「頻尿だから腎だけを治療する」のではなく、胃腸の状態なども確認するのは東洋医学ならではの特徴です。

⑧ 熱感や排尿時の違和感がある

「湿熱」の可能性

一方で、冷えとは反対のタイプもあります。

東洋医学では、

・尿の色が濃い
・排尿時に違和感や熱感がある
・下腹部が重い
・尿がすっきり出ない

などがみられる場合、下半身に余分な湿と熱が停滞する「湿熱(しつねつ)」という状態を考えることがあります。

ただし、排尿時の痛みや発熱、血尿などがある場合は、東洋医学的な体質判断より先に医療機関を受診することが大切です。

膀胱炎などの感染症や、まれではありますが尿路の病気が隠れている場合があります。

⑨ 頻尿で使われることのあるツボ

頻尿への鍼灸では、体質や症状に合わせてツボを選びます。

代表的なものの一つが、下腹部にある「中極(ちゅうきょく)」です。

中極は膀胱の働きと関係が深いと考えられており、頻尿や排尿に関する不調の治療で用いられることがあります。

そのほかにも、

太渓(たいけい)
→ 東洋医学で「腎」と関係の深いツボ

三陰交(さんいんこう)
→ 足の三つの陰経が交わるツボ

陰陵泉(いんりょうせん)
→ 身体の水分代謝を整える際によく用いられるツボ

などがあります。

ただし、「頻尿にはこのツボ」と一つに決めるのではなく、冷え、疲労、睡眠、胃腸の状態なども確認しながら選んでいきます。

※ツボ名をタップすると、それぞれの詳しい解説ページをご覧いただけます。

⑩ 自分の頻尿を知るには「排尿日誌」もおすすめ

「自分は本当に頻尿なのかな?」と思ったら、数日間だけでもトイレの記録をつけてみると状態が分かりやすくなります。

記録するのは、

・トイレへ行った時間
・おおよその尿量
・水分を飲んだ時間と量
・強い尿意があったか
・夜中に何回起きたか

などです。

日本泌尿器科学会でも、頻尿の状態を把握する方法として排尿日誌が紹介されています。

「夜だけ尿量が多い」「一回の量が少なく何度も行っている」など、自分では気づかなかった特徴が見えてくることがあります。

⑪ 水分を極端に減らすのは注意

「トイレが近いなら、水を飲まなければいい」と考える方もいますが、自己判断で極端に水分を減らすのはおすすめできません。

一方で、「健康のため」と必要以上に水分を摂っていることが頻尿につながっているケースもあります。

大切なのは、単純に水分を増やしたり減らしたりすることではなく、なぜ排尿回数が増えているのかを確認することです。

特に持病があり、水分摂取について医師から指示を受けている方は、その指示を優先してください。

⑫ 鍼灸治療でできること

鍼灸治療では、膀胱だけを見るのではなく、

・身体の冷え
・胃腸の状態
・睡眠
・疲労
・むくみ
・年齢による身体の変化

なども確認しながら、その方の状態に合わせて施術していきます。

東洋医学では同じ「頻尿」という症状でも、身体の状態によって治療方針が異なります。

一方で、頻尿には前立腺肥大症、過活動膀胱、糖尿病、尿路感染症などが関係していることもあるため、鍼灸だけですべてを解決しようとするものではありません。

必要に応じて医療機関で原因を確認したうえで、その方の体調を整える選択肢の一つとして鍼灸を取り入れていただければと思います。

⑬ こんな症状がある場合は医療機関へ

頻尿に加えて、

・尿に血が混じる
・排尿するときに痛みがある
・発熱がある
・尿が出にくい、ほとんど出ない
・急に排尿回数が大きく増えた
・強い喉の渇きや多量の尿が続く

などがある場合には、病気が隠れている可能性があります。

このような場合は我慢せず、泌尿器科や内科などの医療機関へ相談してください。頻尿の原因がはっきりしない場合についても、日本泌尿器科学会は泌尿器科専門医への相談を勧めています。

⑭ まとめ

「トイレが近い」という悩みは、人には話しづらく、「歳だから仕方ない」と我慢してしまうこともあります。

しかし頻尿には、身体の水分量や生活習慣だけでなく、膀胱、前立腺、睡眠、内科的な病気などさまざまな要因があります。

東洋医学でも、頻尿を一つの体質だけで考えるのではなく、腎陽虚・腎気不固・脾陽虚・湿熱など、その方の身体全体をみながら考えていきます。

「病院へ行くほどなのか分からない」
「検査では大きな異常がないけれど、トイレが近くて困っている」

そんな場合も、一人で我慢せずご相談ください。

⑮ よくある質問(Q&A)

Q. 1日に何回トイレへ行ったら頻尿ですか?

A. 一般的には、起床してから就寝までに8回以上が目安とされています。ただし個人差があり、8回以下でも以前より明らかに増え、本人が困っている場合には頻尿と考えられます。

Q. 夜中に1回トイレへ行くだけでも夜間頻尿ですか?

A. 定義上は、眠ってから排尿のために1回以上起きる状態を夜間頻尿といいます。ただし、治療が必要かどうかは回数だけでなく、本人がどの程度困っているかや原因によって異なります。

Q. 年齢とともにトイレが近くなるのは仕方ないですか?

A. 加齢に伴って夜間頻尿は増える傾向がありますが、「年齢のせい」と決めつける必要はありません。前立腺や膀胱、睡眠、内科的な病気などが関係している場合もあるため、気になる場合は原因を確認することが大切です。

Q. 頻尿には水分を減らした方がいいですか?

A. 必要以上に水分を摂っている場合は見直しが役立つこともありますが、自己判断で極端に減らすのは避けましょう。持病などで医師から水分摂取について指示を受けている場合は、その指示を優先してください。

Q. 頻尿は鍼灸だけで治療できますか?

A. 頻尿にはさまざまな原因があるため、まず病気が隠れていないかを確認することが大切です。そのうえで鍼灸では、冷えや疲労、睡眠、胃腸の状態なども含めて身体全体をみながら施術していきます。

長津田櫻花堂治療院の風景

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著者:櫻花堂治療院 院長 大久保昌哉

横浜市緑区長津田にて櫻花堂鍼灸院を運営している大久保昌哉です。スポーツトレーナーとしての経験や介護福祉士としての資格を持ち、身体と心の健康をサポートするための情報をお届けしています。不眠症や冷え性、自律神経失調、腰痛、肩こりなど慢性的な疾患やケガなどの改善を得意としています。

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