水分補給は多すぎても少なすぎてもダメ?夏に知っておきたい正しい水の飲み方

① はじめに

暑い日が続くと、「熱中症にならないように、しっかり水分をとりましょう」という言葉をよく耳にします。

もちろん、夏の水分補給はとても大切です。しかし実は、水分は少なすぎてもよくありませんが、多ければ多いほどよいというわけでもありません。

さらに、

  • 水分そのものが不足する
  • 水を短時間に大量に飲む
  • スポーツドリンクや清涼飲料水を水代わりにたくさん飲む

では、それぞれ身体に起こることが違います。「じゃあ、夏は何をどのくらい飲めばいいの?」

今回は、そんな疑問にできるだけ分かりやすくお答えします。

② 水分が不足すると「脱水」に

人間の身体にとって水分は、体温調節や血液循環などに欠かせません。夏は気温が高く、汗をかくことで体内の水分が失われます。

この水分補給が追いつかなくなると脱水状態になり、さらに暑い環境では熱中症につながることがあります。

特に注意したいのが、

  • 高齢者
  • 子ども
  • 屋外で仕事をする方
  • スポーツをする方
  • 汗を大量にかく方

などです。

「喉が渇いたから飲む」だけではなく、暑い環境や運動中では、ある程度意識して水分を補給することが大切です。

③ では、水はたくさん飲めば飲むほどいい?

ここが今回お伝えしたいポイントです。

水分不足を怖がるあまり、短時間に大量の水を飲むこともおすすめできません。

体内では、水分とナトリウムなどの電解質が一定のバランスを保っています。

ところが、短時間に非常に多くの水を飲み、身体が排泄できる量を上回ってしまうと、血液中のナトリウム濃度が低下することがあります。

これが低ナトリウム血症です。

水分過剰によって起こるものは、一般に「水中毒」と呼ばれることもあります。

急激にナトリウム濃度が低下すると、水分が細胞内へ移動し、特に脳がむくむことで、頭痛・吐き気・意識の混乱などが現れ、重症ではけいれんや昏睡につながることがあります。

ただし、これは「水を少し多く飲んだら危険」という意味ではありません。

健康な人が通常の生活の中で適度に水を飲むことを怖がる必要はなく、問題になるのは必要以上の水を短時間に大量摂取するようなケースです。

④ 汗をたくさんかいた時は「水だけ」にも注意

汗をかくと、身体から失われるのは水だけではありません。

ナトリウムなどの電解質も一緒に失われます。

そのため、長時間の運動や屋外作業などで大量に汗をかいているにもかかわらず、水だけを大量に飲み続けると、体液のバランスが崩れる可能性があります。

スポーツの現場では、その日の気温や湿度、運動量、体格、汗の量などを考えながら水分を補給することが重要です。

日本スポーツ協会の熱中症予防資料でも、水分補給量は個人によって異なるとしたうえで、マラソンでは1時間あたり400〜800mL程度がおおよその目安として示されています。

つまり、

「一度にたくさん飲む」のではなく、「必要量をこまめに補給する」

という考え方が大切です。

⑤ スポーツドリンクなら、いくら飲んでも大丈夫?

もう一つ気をつけたいのが、何を飲むかです。

暑い日にスポーツドリンクを飲むこと自体が悪いわけではありません。

運動や大量の発汗によって失われた水分や電解質を補う場面では役立ちます。

しかし、

「身体によさそうだから」
「スポーツドリンクだから」
「水分補給になるから」

と、普段から水代わりに何本も飲むのは別の話です。

スポーツドリンクやジュース、炭酸飲料などには、商品によって糖質が多く含まれているものがあります。

そのため、大量に飲み続ければ、知らないうちにかなりの糖分を摂取していることがあります。

“健康そうな飲み物=いくら飲んでも大丈夫”ではありません。

⑥ 「ペットボトル症候群」を知っていますか?

糖分を多く含む清涼飲料水を大量に飲み続けることで高血糖になり、

喉が渇く

さらに甘い飲み物を飲む

さらに血糖値が上がる

また喉が渇く

という悪循環に陥ることがあります。

いわゆる「ペットボトル症候群」と呼ばれる状態です。

特に「暑いから水分をとらなきゃ」と、ジュースやスポーツドリンクを水代わりにしている方は注意が必要です。

また、血糖値が高くなると尿の量が増え、「最近やたら喉が渇く」「トイレが近くなった」と感じることもあります。

ただし、頻尿の原因は糖尿病だけではありません。加齢や冷え、膀胱の問題、前立腺、自律神経など、さまざまな原因が考えられます。

「最近トイレが近い」「夜中に何度もトイレに起きる」という方は、こちらの記事でも詳しく解説しています。

▶︎ トイレが近いのはなぜ?頻尿・夜間頻尿の原因と東洋医学での考え方

身体によさそうなイメージのある飲料でも、毎日何本も飲むのであれば、一度ラベルの炭水化物・糖質量を確認してみるのもおすすめです。

夏は「水分不足」だけでなく、水分補給の中身にも目を向けてみましょう。

⑦ 結局、夏はどうやって水分補給すればいいの?

ここまで読むと、

「水分不足もダメ、水の飲みすぎもダメ、スポーツドリンクも飲みすぎちゃダメ……じゃあどうすればいいの?」

と思いますよね。

答えはそれほど難しくありません。

■普段の生活では

基本的には、水やノンカフェインのお茶など糖分の少ない飲み物を中心に、こまめに補給しましょう。
喉がカラカラになるまで我慢してからペットボトル1本を一気に飲むより、何回かに分けて飲む方が無理なく補給できます。

※コーヒー・紅茶・緑茶などカフェインを含む飲み物には利尿作用があります。普段飲む程度であれば水分補給にならないわけではありませんが、暑い日の水分補給をこれらだけに頼るのではなく、水や麦茶などのノンカフェイン飲料も一緒に取り入れることをおすすめします。

大切なのは、数字だけにこだわることではなく、一気飲みせず、状況に合わせてこまめに補給することです。

■運動中や大量に汗をかく時は

運動量や気温、湿度、発汗量によって必要な量は変わります。

長時間運動する場合などは、1時間に400〜800mL程度が一つの目安になりますが、全員が必ずこの量を飲まなければならないという意味ではありません。

また、大量に汗をかく場合は水だけではなく、塩分・電解質の補給も考えましょう。

⑧ 「水分補給=○リットル飲む」と考えすぎない

よく、

「1日に水を2リットル飲んだ方がいいですか?」

と聞かれることがあります。

しかし必要な水分量は、

  • 年齢
  • 体格
  • 食事内容
  • 運動量
  • 発汗量
  • 気温や湿度
  • 持病
  • 服用している薬

などによって変わります。

さらに、私たちは飲み物だけでなく、食事からも水分を摂っています。

そのため、すべての人が同じ量の水を飲めばよいとは限りません。

「○リットル飲まなければ」と数字だけを追いかけるよりも、その日の身体の状態や活動量、汗の量に合わせることが大切です。

※心臓や腎臓などの病気で水分・塩分制限を指示されている方は、自己判断で水分量を増やさず、主治医の指示に従ってください。

⑨ 東洋医学でも「水」は多ければいいとは考えません

東洋医学では、身体に必要な水分を「津液(しんえき)」と考えます。

津液は身体を潤し、臓腑や皮膚、粘膜などを正常に保つために必要なものです。

一方で、水分の巡りや排泄がうまくいかず身体に余分な水が停滞した状態は、「湿(しつ)」や「痰湿(たんしつ)」などとして考えることがあります。

つまり東洋医学でも、

「水分は身体に必要だから、多ければ多いほど健康になる」

とは考えません。

必要なものを、必要な場所へ届け、余分なものはきちんと外へ出す。

このバランスが大切だと考えます。

夏は冷たい飲み物を摂る機会も増えます。

胃腸が弱い方では、冷たいものを一度に大量に摂ることで、お腹が冷えたり、食欲が落ちたりすることもあります。

水分補給は必要ですが、身体の状態に合わせて摂ることも意識してみてください。

⑩ 夏の水分補給で覚えておきたい3つ

今回のお話を簡単にまとめると、

① 足りなすぎない
→ 脱水・熱中症に注意

② 一気に飲みすぎない
→ 水分過剰・低ナトリウム血症に注意

③ 甘い飲み物ばかりにしない
→ 糖分の過剰摂取やペットボトル症候群に注意

です。

つまり夏の水分補給で大切なのは、「量・タイミング・中身」の3つです。

そして、

「自分には結局どのくらいの水分が必要なの?」

と思った時に、簡単に確認できる目安のひとつが尿の色です。

水分が足りている時の尿は一般的に薄い黄色ですが、身体の水分が不足して尿が濃縮されると、黄色が濃くなっていきます。

その日の気温や運動量、汗の量によって必要な水分量は変わりますので、「毎日必ず○リットル」と数字だけで考えるのではなく、尿の色も参考にしながら水分補給を調整するのも一つの方法です。

※朝一番の尿は濃くなりやすく、薬やビタミン剤、食べ物などによっても尿の色が変わることがあります。あくまで簡単な目安として考えてください。

以前の記事では、尿の色から隠れ脱水をチェックできる「尿カラーチャート」も掲載しています。

▶︎ その不調、「隠れ脱水」かも?尿の色から水分不足をチェック

「暑いからとにかく飲む!」ではなく、身体から出てくるサインも見ながら、上手に水分補給していきましょう。

⑪ よくある質問

Q. 水は1日に2リットル飲んだ方がいいですか?

A. すべての方に一律で2リットルが必要というわけではありません。食事に含まれる水分や体格、運動量、発汗量などによって必要量は変わります。

Q. 一度に200mL以上飲んでも吸収されないのですか?

A. いいえ。200mLを超えると吸収されなくなるわけではありません。一気に大量に飲むのではなく、状況に合わせてこまめに補給することをおすすめします。

Q. 運動中はどのくらい飲めばいいですか?

A. 気温・湿度・運動強度・体格・発汗量によって異なります。長時間の運動では1時間400〜800mL程度が一つの目安として示されていますが、自分の発汗量や環境に合わせることが大切です。

Q. スポーツドリンクは水の代わりに飲んでもいいですか?

A. 大量に汗をかいた時などには役立ちますが、普段から水代わりに何本も飲む必要はありません。商品によっては糖質を多く含むため、栄養成分表示も確認しましょう。

Q. 水を飲みすぎると本当に危険なのですか?

A. 短時間に非常に大量の水を摂取すると、血液中のナトリウム濃度が低下して低ナトリウム血症を起こすことがあります。ただし、通常の生活で適度に水分補給することまで怖がる必要はありません。

⑫ まとめ

夏になると「水分をしっかり摂りましょう」という情報が増えます。もちろん、それは間違いではありません。

しかし、

水分は少なすぎても、多すぎてもよくありません。

そして、何を飲むかも大切です。

水分不足による脱水だけでなく、短時間の大量摂取による水分過剰、糖分の多い飲み物の摂りすぎにも注意しながら、

「量・タイミング・中身」

を意識して、この夏も上手に水分補給していきましょう。

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著者:櫻花堂治療院 院長 大久保昌哉

横浜市緑区長津田にて櫻花堂鍼灸院を運営している大久保昌哉です。スポーツトレーナーとしての経験や介護福祉士としての資格を持ち、身体と心の健康をサポートするための情報をお届けしています。不眠症や冷え性、自律神経失調、腰痛、肩こりなど慢性的な疾患やケガなどの改善を得意としています。

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