肩こりは、鍼灸治療家の技術を試す場面でもあります。どの業界でもその人の技量をはかるものは実にシンプルです。ピザならマルゲリータ、カクテルならジントニック、左官屋なら平らな壁。その中でいうと鍼灸治療家は肩こりかなと私は思っております。

肩こりに悩まされている方が多いのは事実です。肩こりがなくなれば、どれだけ生活が快適になるか想像してみてください。朝起きたとき、首や肩が軽く、肩こりによる不快感がなくなることで、日常の仕事や趣味に集中できるようになります。

鍼灸が肩こりに効く理由 – 科学的な視点から

鍼灸が肩こりに効果的である理由には、いくつかの科学的なメカニズムが関係しています。鍼灸は、経絡（けいらく）と呼ばれる身体のエネルギーラインに沿って鍼を刺すことで、気や血液の流れを整え、身体のバランスを回復させます。

また、鍼治療は以下のような作用を通じて肩こりの改善に寄与します：

• 血行促進：鍼を刺すことで、局所的に血流が促進され、肩や首の筋肉が緊張している場合に滞った血流を改善し、肩のこりや痛みを和らげます。
• エンドルフィンの分泌促進：鍼治療により、体内でエンドルフィンという天然の鎮痛物質が分泌され、肩こりによる痛みや不快感を軽減します。
• 筋肉の緊張をほぐす：鍼によって筋肉の深部に直接働きかけ、過度な緊張をほぐすことで、肩や首のこりを解消します。
• 神経系の調整：鍼灸は交感神経と副交感神経のバランスを整え、ストレスによる自律神経の乱れを改善し、肩こりを和らげます。

肩こり治療には、根本的な原因の特定が重要です

患者さんは明確に自覚があり、治療が終わったら改善していて欲しいと思って来院されます。鍼灸治療によって肩こりが改善されると、肩の軽さに驚く方が多いです。肩こりだけでなく、頭痛や首の痛みまで改善され、仕事や日常生活がより快適になります。

肩こりの背後には、姿勢の悪さやストレス、筋肉の緊張、さらには自律神経の乱れなどが影響している場合があります。治療家はその肩こりの奥にある原因を探らなければなりません。例え一時的に痛みが取れても、根本的な原因を改善しなければ治療とは言えないからです。その為に中医学で言うなら、どこの臓腑からきているのか。温め、または冷やすと改善するのか。会話の中で出てきた気にも留めていなかった他の症状が実は本当の原因ではないかなど、肩こりの前後左右を見ながら今までの知識や経験を基に、その方の治療計画を立てなければなりません。

肩こり治療における施術ステップ

当院の鍼灸治療では、まずはしっかりとお話を伺います。そして患者様一人ひとりの状態に合わせて施術を行います。最近では街の中に気軽に受けることができるマッサージ店が多く見受けられますが、一時的な解消ができても数日たてばまた悩まされることもあるかと思います。これは神経系に効果が届いておらず、根本的な血流の改善ができていない、自律神経の改善につながっていないことが原因です。当院ではこのようなことがないように患者様の状態を見極めること、患者様自身が気づいていない原因を見つけることで治療後のこりや痛みの軽減はもちろん、その後の長く効果が続くようにアプローチします。